名古屋が「魅力がない都市」と言われて久しい。

自虐系バズワードの節もあるが、「魅力がないと思われている」前提でこの記事を書くことをご容赦願いたい。

トータル二年半くらい、愛知県民だった。名古屋市をはじめ、愛知県内の地方都市を転々としていた。Ingressにハマっていたこともあり、今思い返しても生粋の愛知県民並みにガチで楽しんでいたと思う。今もa-blog cmsのイベントで年に2回、名古屋に「帰る」のを楽しみにしている。

そんな私でも、歴史にあまり興味がない人に、食べ物以外のスポットを紹介しにくいのが正直なところである。

「魅力的な都市」と言われる、札幌市に帰って、いろいろと気付いたことがあるので書いておく。

札幌ブランドの正体

そもそも、札幌も都市単体では、そんなに魅力がない。

ここで、2016年の「地域ブランド調査」を見てみたい。

トップ5のうち、3都市が北海道の主要都市である。

http://tiiki.jp/news/wp-content/uploads/2016/10/2016_city_ranking1.pdf

実は、内地(他県)の人たちが「札幌」を連想するとき、「函館」や「富良野」の風景を同時に連想している。道庁や時計台は確かにエキゾチックかもしれないが、あれを見るためだけに高い飛行機代をかけるほどでもない。テレビ塔に至っては名古屋にそっくりである。

食べ物についても然りである。札幌市には海がない。市内だけで食べられるグルメは焼きとうきびと味噌ラーメンくらいで、イカは函館、牡蠣は釧路、カニは網走あたりからの輸送だ。

札幌ブランドの正体は、北海道内の各都市ブランドの集合体なのである。

名古屋ノットイコール愛知

この視点で愛知県を見てみると、名古屋以外の各都市は、驚くほど東海以外の地域の人達に知られていない。ほとんどが鉄道のみ、かつ名古屋から一時間程度でアクセスできる。

常滑焼の産地で、印象的な木造の町並みが広がる常滑市。

戦国時代のまま現存する犬山城と、日本中の明治時代の建造物を移築した明治村を擁する犬山市。

神君家康の故郷であり、春には城の周りが桜で覆われる岡崎市。

抹茶の生産量全国一、美しい茶屋や新感覚の和カフェが並ぶ西尾市。

童話「ごんぎつね」の舞台であり、秋には彼岸花で川岸が真っ赤に染まる半田市。

これらが「名古屋=愛知県」としてセットになれば、充分に愛知県全体が観光地としてアピールできるはずなのに。

県内の各都市の意識が、バラバラ、もしくは県内にしか向いていないのである。戦国から続く縄張り意識とかがあるのだろうか。謎である。

※個人的には紅葉の名所・香嵐渓、サーバルちゃんがいる豊橋動植物公園などもおすすめだが、さすがに地元向けかなと思う

名古屋メシという言葉の弊害

北海道の人間は、「北海道メシ」とは言わない。

素材がうまいんだから何を食ってもうまいと本気で思っているからである。

具体的に聞かれれば、どの店の何がうまいかを教えるが、ジンギスカンだけとか、寿司だけを勧めるといったことはあまりしない。

誤解しないでほしいが、名古屋を馬鹿にしているわけではない。

愛知県に引っ越してきて驚いたのは、愛知県がたいへんな食料の生産地だったことである。

温暖で野菜も肉も魚もおいしく、発酵食品も夏野菜も、北海道よりずっと味が深い。

何を食っても美味しいのは愛知県の方である。

名古屋は個性的な料理がたくさんあるので、「名古屋メシ」とひとくくりにして観光アピールをしてきた。

「名古屋メシ」は便利な言葉だったろうが、この言葉を使いすぎたことで、名古屋市はあまりにも「食べる観光」、しかも「特定の料理」に偏りすぎてしまったのではないか。

結果として、名駅周辺の名古屋メシの店はいつも長蛇の列で、並ぶことと食べることに疲れた観光客は、「観る観光」「体験する観光」はほとんど注目せずに名古屋を離れていく状況となっている。

「おおーい北海道キャンペーン」の話

北海道では1984年に、民放各局が連合した「おおーい北海道」というキャンペーンがあった。

ドラマ「北の国から」のヒットが落ち着いた頃で、まだまだ知名度が低かった北海道の地方都市すべてを活性化させようと組まれたものである。このあたりから、北海道観光は「食べる」だけでなく「観る」「体験する」にシフトしていったように思う。

このキャンペーンは道民の心に「自虐に走らない郷土愛」を刷り込むという効果があった。テーマソングは今も北海道日本ハムファイターズの応援歌となっている。

今の「北海道の魅力」は土地のポテンシャルだけで作られたものではなく、まさに「親父の親父が拓いた」レベルの、地道な人民教育なのである。

もっと行けるでしょ名古屋、いや愛知

名古屋市民に言いたい。いつまで「名古屋メシ」「戦国」ネタに頼り続けるのか。

レゴランドの微妙すぎるサービスにも本気で文句を言うべきだろう。再来月行くけど。

名古屋以外の愛知県民に言いたい。「名古屋」と言われてしまうのを嫌がってそれで終わりか。

名古屋を通過点にして我が街に来い」くらいの勢いがほしい。

カリモクの本社が刈谷市だというのは引っ越してから知ったぞ。

ミツカンの本社が半田市というのも引っ越してから知ったぞ。ミツカンの納豆うまいよな!

「食べる観光」は強い。しかし、リピーターがつきにくい観光である。

「体験する観光」は時間が掛かるが、食べる観光や観る観光と合わさることでいつまでも記憶に残る。

名古屋は豊かで、なんでも揃っている。独自の観光を作り出せる、すばらしい土台があると思うのだ。

#think, #nagoya, #sapporo

この記事を書いた人

うぇびん

愛知県豊橋市に住んでいる、荒ぶるウェブおばさん。WordPressをはじめとした各種CMSを研究するのが好き。札幌のIT企業のビットスター株式会社に所属しています。