猛暑でエアコンから遠いデスクで作業するのが嫌になり、居間用にノートPCスタンドとBluetoothキーボードを購入したのに、届いた翌日から梅雨が始まっております。皆さんお元気でしょうか。
さて、先日のOSC参加報告の記事以来、ブロックテーマの勉強をしつつ、勤め先にどのように導入すべきか考えています。個人事業主の頃は私だけが頑張って学習すればよかったのですが、今は30人近くが所属しているIT企業の制作部の一人です。なので闇雲に導入を進めるわけにはいかないし、混乱を招かないように導入へのマイルストーンとかガイドラインを作らなくてはいけません。
とりあえず現状考えるべきこと、懸念していることを書き出してみます。ディレクションのスキルは高くないので抜け漏れが多くありそうですが。
完全なモックアップを作成しないことについて、どのように顧客に理解いただくか
見出しが長いですね!見出しのスタイルを考えるときは、複数行になった場合を考えなくてはいけませんよ!
ブロックテーマは、HTMLでモックアップを作成してから確認いただく…という流れが適していません。ですが顧客が大きな企業・団体であるほど、正確なモックアップの提出を求めます。それぞれの顧客の窓口になっているメンバーに、どう交渉してもらうかというのは今の段階から進めないといけません。新規案件の打診が来た段階で動かなくてはならないです。
コーディングの費用がお安くなります!とお金を持ち出すのは簡単ですが、実際はそんなに単純ではありません。ブロックテーマを使用する案件はデザイナー・コーダーにプロジェクトの終盤まで協力いただきます。またエリアごとに編集可・不可を定義する必要があるのでその分の費用が上乗せされ、全体で大きな違いは出ません(※)。なので「顧客がモックアップに何を求めているのか」を考える必要があります。
※個人でa-blog cmsを導入したばかりの頃は、これを考慮していなくてずいぶん苦労しました
ほとんどの顧客は細かいコードチェックはせず、クリックしたときの挙動やページ遷移、各端末での画面内での見え方を重視しています。FigmaやAdobe XDなどの高度なデザインツールの普及で、顧客が求めているものはこれらで満たされることも多くなりました。なので改修案件から「Figmaのプレビューのみで進めても良いか?」という感じで段階的に慣れていただき、モックアップがなくても大丈夫そうですね!という空気や信頼感を醸成することになりそうです。実際WordPressとは関係なく、勤め先ではその対応をしているところです。
課題は、大きなアニメーション効果があるなど、Figmaでは表現できないページはどうするかという点です。Premierなどの動画ツールで作ってみるのは?真っ白なページにそのパーツだけ作って見せるのは?とか考えていますが明確な答えが出ていません。
それぞれの工程にはどれほどの工数が発生するのか
大きな制作会社ほど、正式な見積もりが必要です。私の勤め先のように営業部があるところはなおさらです。その場合、各工程にどのくらいの工数が発生するのかを出さなくてはなりません。
これまでの、テーマにコーディングどおりのHTMLを再現していたWordPressの制作フローとは大きく異なります。考えられる工程は以下です。
- 記事本文にどのブロックを使用するか検討する
- 公式では実装できない箇所の実装方法を検証する
- ページのアウトラインを作る
- ブロックが生成するHTMLに対して不足分のCSSを反映する
- 使用予定のブロックに対するスタイルを確認するページを作る(※)
- デザイナー、ディレクターに確認し、フィードバックを反映する
- 原稿を流し込み調整する
※ブロックテーマには全ブロックの見た目を確認できるページがテーマの設定画面にあります。つまりその画面でチェックしてから外部向けのページを用意するということになります
公式ブロックでは実装が難しい箇所はどう予測するのか
問題となるのは二番目の「公式ブロックでは実装できない箇所の実装方法を検証する」です。最近の公式ブロックは高機能ですし、ブロックを追加するプラグインもありますが、それでも対応できない(=HTMLブロックとCSSで対応した方が早い)ブロックもあります。
これについては頻繁に使用するであろう構築手法について事前にざっと調べておくしかないと思います。案件が動いてから毎度調べていたら無駄な作業になってしまいます。「頻繁に使用する構築手法」を知っているのは組織内でCMSの技術担当です。つまり勤め先にとっては私自身ですから、学習の時間をもらって社内ナレッジなどにまとめていかなければならないです。
私が現状ブロックテーマについてわからないのは以下で、これらがわかれば構築部分の工数積算はなんとかなるだろうと考えています。
- 投稿一覧が、カルーセル・モーダルポップアップ・絞り込み等の特殊なUIとなっている場合、どのように実装するのか
- 特定のブロックの情報は一覧ページにどのように表示するのか
- 旧サイトからの移行でカスタムフィールドの情報取得が必須の場合、カスタムフィールドは一覧ページにどのように表示するのか
- カスタムタクソノミーは一覧ページにどのように表示するのか、複数出せるのか
- Google Fontsは管理画面から設定できるが、FONTPLUSや自前サーバーの導入はこれまでと同じなのか
- theme.jsonの編集でなければ設定できない項目はあるのか
- SVGスプライトを実装するにはHTMLコードブロックを使うしかないのか
デザイナー・CMSサブ担当の作業時間はどうするのか
前項の「デザイナー、ディレクターに確認し、フィードバックを反映する」という工程に関係しますが、デザイナーはこれまでのWordPressの制作ではCMSの構築段階に入ると実質、作業終了となっていました。ですがブロックテーマの場合は主要ブロックごとにミーティングが必要ですし、認識違い、想定違いによる修正も多くなります。逆に、スムーズに進むと毎週ミーティングの時間を取ったにも関わらずほとんど話題がないこともあるはずです。つまり見積りと現実との差が大きくなります。
またCMSサブ担当は、これまでであれば、技術的にそれほど難しくないテンプレートや、同じようなテンプレートが複数必要なときに量産をしてもらっていましたが、ブロックテーマの場合は色やフォントの設定をしてもらうとか、テストページを組んでもらうとかの事前作業が増えます。
単純にその分を多めに見積もっておけば…ということになりますが、顧客にしてみれば曖昧な見積りには首を縦に振れないはずです。これらをこれまでのCMS構築に含めてしまうのか、ちゃんと新しい項目として出すのかを、工数を担当しているメンバーと詰めなくてはなりません。
仕様変更にはどのくらい柔軟に対応できるのか
大きな案件ほど、プロジェクトの終盤でのCMSに対する仕様変更が増えます。例えば以下のようなものです。
- ニュースを新着順に表示してもらっていたが、指定した記事をいくつか先頭に、指定した順番で抜き出してほしい
- ここの文言は子サイトすべてで共通だったが、やはり子サイトごとに編集可能にしてほしい
- ここの一覧のサムネイルはデスクトップとモバイルで変えたい
- このサブコンテンツは丸ごと2フェーズ以降にしてほしい
もちろん費用はいただきますが、できるだけ少ない工数で改修したいものです、自作ブロックではない場合、その柔軟さは各ブロックにはあるのかという懸念があります。かといってこれらの事態を予測して自作ブロックばかりにしてしまうとこれまでのテーマ制作と全然変わりません。
…という感じで懸念していることと考えられる対策を書き出しました。まだまだありそうですがこれ以上は私には無理なので工数積算に長けている社内のメンバーに持ち込んで相談することにします。
今日はこうしてやたら長い記事を書いて終わってしまいましたが、来週、早めにいただく夏季休暇の間に、この屋号サイトを公式のブロックテーマでリニューアルしてみます。現状はSnow Monkeyなので同じ作者のブロックテーマ「unitone」も考えましたが、公式でどこまで可能なのか知りたいところです。書いたからにはやらねばなりませんね!!