フリマアプリ「メルカリ」のローカルルール「即購入禁止」が話題になっていますね。
たまたま、家財整理で二ヶ月ほどメルカリを利用していましたが、メルカリにこの文化が生まれた背景は、システムの問題が大きいように思っています。
Facebookでもちらっと書いたことなんですが、主に「ヤフオク」と比較して、もう少し詳しく書きます。アプリやWebサービスを開発している人の参考になるかもしれません。
安くはじめるヤフオク、高くはじめるメルカリ
メルカリを知らない人に説明すると、メルカリは「フリーマーケット」の概念をネット上に持ち込んだアプリです。なので、出品後に販売条件を変更することができ、購入は予約ではなく即決となります。かなりユルい売買が安全にできます。
結果として、ヤフオクの「安い値段で開始して、リテラシの低い人、もしくは価値を感じる人に値段を上げてもらう」文化に対し、メルカリは「高い値段で開始して、リテラシの低い人に買ってもらう、もしくは値引き交渉に応じる」文化ができたようです。
初期ユーザー(手練れの業者?アフィリエイター?)が「メルカリで儲けよう!」という流れをぶち上げるためこの流れを作ったのかも…あくまで憶測ですが。
買い手優位のシステム
値下げを前提とした流れは、一旦下がると上に行くことはありません。なのでメルカリでは、送料や手数料(10%)を考慮しない身勝手な値下げ交渉がまかり通っています。
値下げ交渉は、買い手が優位となり、よほどの商売上手でなければ、売り手のモチベーションが下がります。
私自身、散々悩んで出品を決めた大事なものをとんでもない価格で値下げ交渉されたときはものすごく凹みました。
買い手が優位となっているのは、文化面だけではありません。メルカリは先払い制ですが、発送後、買い手が「受け取り通知」をしなければ、売り手に売上金が入りません。
また、必ず買い手が先に評価し(受け取り通知と同時)、かつ、売り手は自分が買い手を評価するまで結果を見ることができません。
これは悪質な業者による詐欺や「報復評価」から買い手を守るためのシステムですが、以下の二点の問題があります。
- 買い手がルーズな性格だったり、忙しくて荷物を受け取れないといつまでもお金が入らない
- 買い手が自分より明らかに低い評価をした場合も、取引が終了しており文句が言えない
また、これもシステム上の問題ですが、売り手は「商品を出品した状態で購入のみ禁止する」ことができません。これができないと「コメント欄で書い手と交渉中に、別の買い手が購入」ということが起こってしまいます。
ネット販売では当たり前のことですが、フリーマーケットとして捉えると「感じのいい人と交渉をしている隙に、得体の知れない人が挨拶もなしにお金を投げてよこし、サッと商品を持っていく」わけで、けっこう腹が立つかもしれません。
「いいね」システムもけっこうイライラします。ヤフオクのウォッチリストと同じなのですが、問答無用でホーム画面に通知が入る割にそれ以上のことは何もしてこないので「こいつら、私が根負けして値下げするのを待ってるんじゃ…」と邪推してしまいます。たぶん買い手は何も考えてないです。
売り手の反動
このように、メルカリは買い手の雑さによって売り手にフラストレーションが溜まることが多くなっているようです。この辺の記事を見ると、売り手の怨嗟の声が伝わってきます。
売り手にフラストレーションが溜まっていくと、売り手は自分を守り、面倒なことを避けようとします。
プロフィールはひじょうに長くなり、ローカルルールがたくさんできます。
「即購入禁止」「いいね禁止」も、そもそもシステムによる影響が大きいのです。
そんだけ慣れてきたらヤフオクやジモティーの方が元取れるんじゃ…と言いたいところですが、そういう考えはないようです。
ユーザーエクスペリエンスの本質
そんなこんなで、メルカリに置いていた品物をすべて引き払ったのでした。私の取引相手は感じが良い人ばかりで、ありがたい評価コメントをくださった人もいました。気分が良いうちに、一旦お暇しようと思います。
私たちIT業界がよく使う用語に「ユーザーエクスペリエンス(UX)」という言葉があります。
これは通常、メニューやボタンを操作したときの感覚などの「デザイン」で使われることが多いですが、本来はシステム全般の満足度にも当てはまります。
メルカリはボロクソに言われるほど悪いサービスではないです。
UIデザインが素晴らしいですし、高めの手数料も、すべてスマホで完結できる安全な取引や、簡単な配送システムにかかっていると思えば妥当です。
ただ、サービスを支える、売り手を満足させるシステム作りが、まだ足りないように感じたのです。