12月21日に開催された、「WCAN 2013 Winter」に参加してきました。
名古屋でははじめてのWeb系イベント参加ということで、思い切ってオープニングのライトニングトークにも登壇してみました。
いろいろと、2013年のWeb制作の事情を考えさせられる内容だったので、感じたことを書いてみます。
タスクの複雑化と向き合う制作者
ライトニングトークでは、仕事の関係で習得した「Grunt.js」という自動化ツールについてご紹介しました。
対象が限られるCMSの話はやめて、最近のテーマにしている
「難しい話題をどうわかりやすく説明するか」
というのに取り組んでみました。
Gruntは、GitやSass、ファイル圧縮など、ますます複雑になっていくWeb制作のタスクを軽減するために作られたツールです。
今回使ってみて、きちんとしたワークフローが確立しているチーム制作にこそ威力を発揮するものだなあと感じました。
フリーランスの場合、中間に制作会社・企画会社が入っている案件が少なくありません。それらの会社がまったく異なるフローを持っていたり、Sassやファイル圧縮を求めていない(もしくは、そのスキルに達していない)場合、導入しても、あまりうま味を感じないように思うのです。
後述するCMS等だけでなく、静的なサイトであっても、制作者に案件ごとにツール導入の判断が求められてきているようです。
その機能は、本当にCMSに必要なのか
「日本のCMS事情をまとめてみる」
コトトイ・ファクトリー 藤田さん
藤田さんは、ブログブームがはじまった頃から一貫して、CMSでのサイト構築に関わり続けている方です。
特定CMSのベンダーでない方のCMSのお話を聴く機会というのは、とても貴重だと思います。
特に印象に残ったのは、エンタープライズCMSにおいて「多段階承認」は必要なのか?という話です。
官公庁などが関わる案件では、だいたい入札条件に「◯段階までの承認機能」があるそうです。実際、私も聞かれたことが何度かあります。
速報性が問われる原稿の場合、何段も承認を得てから公開するのでは遅いです。そもそも、承認する立場の人が「これは公開して良いか」を正しく判断するリテラシーを身に付けているのかという懸念もあります。
後者の場合、納品前後の教育も想定に入れなければなりません。
CMSはどんどん高機能になっていますが、クライアントの要望は、それが本当に必要か、即座に導入することが可能かを見極めるスキルが必要と思います。
やっぱりリアルでしょ、という話
「クライアント・グローバル視点でのコミュニケーションプランニング」
Great Works TOKYO Office 鈴木さん
世界各国に拠点を持つ企画会社、Great Worksの鈴木さんが、実際の世界のWebプロモーション事例を紹介されていました。
ふたつの企業サイト
ウォッカの「アブソルート」の公式サイトは、グローバルナビをよく見てみると「absolut.com」「absolutdrinks.com」のふたつのドメインがあります。
最近の企業サイトは、「会社や商品を紹介するコンテンツ」と「その商品でどのような体験ができるか提案するコンテンツ」を立ち上げる傾向があるのだそうです。
ファンがファンを呼ぶ
自動車のアウディは、Facebookページのファンが5万人に達したときに、ダイナミックな「ありがとうムービー」を配信しました。
この企画は既存のファンを大喜びさせただけではなく、シェアを通してさらに新しいファンが増える結果になったそうです。
「SNSで新しいファンを得るなら、既存のファンを大切にしよう」という大切なことを再確認した事例でした。
事件を起こして巻き込む
レッドブルは昨年の10月に「人を成層圏まで運んでいってスカイダイビングさせる」というイベントを立ち上げ、一部始終をリアルタイムで中継しました。
たくさんの人が中継を見届け、大成功だったのですが、冷静に考えてみると「すごいけど…で、何?」というイベントだったりもします。
すごいイベント=事件をリアルに自ら起こして巻き込んでしまって、同時に体験したユーザーの満足感を引き出しているといった事例でした。
正直「いいね稼ぎじゃね?」という事例もありましたが、レシピであったり、動画であったり、イベントであったり、どのプロモーションも「リアルの世界」に影響を与えているのが、強く印象に残りました。
薄いスマホサイトならいらない
「スマホサイトが嫌われる理由と改善方法」
could 長谷川恭久さん
Movable Type 6の管理画面デザインも担当している、長谷川さんのお話を聞きました。
ものすごくフランク、というかトークが面白い人ですw
セッションの大半は非公開なのでここでは割愛しますが、「スマートフォンユーザーがひじょうに多くなっている状況に反して、ほとんどのユーザーがスマホ版のウェブサイトにストレスを感じている」という問題を中心に、長谷川さんが実際に行っている改善策について述べられていました。
長谷川さんのお話は、ちょうど今の自分にストンと来る内容でした。
転居の関係で、現地の下調べや買い出しのために、かなりの数のサイトをiPhoneで訪問して、不満だらけだったためです。
スマートフォン専用デザインで、情報や内容に満足したサイトはほとんどなく、迷子になるか、目的の情報がないか、その商品の魅力がさっぱり伝わらないのでした。
同様のテーマはCSS Nite in SAPPOROの公式サイトでも取り組んできましたが、スマートフォンを多用するようになってはじめて、自分のこととして把握できた感じです。
長谷川さんは「MTDDC Meetup NAGOYA 2014」でまたスピーカーをされるので、またお話を聞けるのが楽しみです。
WCANの魅力
WCANは10年以上の歴史を誇る、名古屋を代表するIT系イベントです。
愛知に転居したら、参加しようと考えていました。
WCANの魅力は、イベントによくある「統一テーマ」が決まっていないことだと思います。
自分のスキルや業務に添わないセッションに当たることもあるかもしれませんが、大学の公開講義のように、新しい知識に出会える面白さがあると感じました。
10年も続いているだけに、主催側の気遣いが随所に感じられ、CSS Nite in SAPPOROの実行委員としても、勉強になりました。
ご挨拶いただいた皆さん、また会場でお会いしましょう 😀