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ヒアリングのない「なんということでしょう」は仕事ではない

以前からちらほら話題になっていましたが、「ビフォーアフター」等リフォーム番組の依頼主が、建築士に不満を訴える例が増えているようです。

「劇的ビフォーアフター」住めなくなった我が家!週刊文春で実名告白 (1/2) : J-CASTテレビウォッチ

私はこの手の番組が好きで、数年前は毎週観ていました。

欠陥のある家を匠の技で、驚きの大改造。
「なんということでしょう」喜ぶ依頼人。

当時は単純に「匠すごいなー」と思っていたのですが、その「なんということでしょう」は、依頼主との擦り合わせがないまま実行されていた、というのです。

彼は築48年の中古住宅を10年前に購入したが、敷地に高低差があり、一番大きいのは70㎝もあった。階段を作って上り下りしていたが、踏み板が狭く、妻が転んでアキレス腱を切ったこともあり、改造に踏み切ったのだそうだ。
見積もりは2100万円。リフォームにしてはかなりの高額である。しかも見せられたのは手書きの見取り図だけで、滝澤氏と中薗氏が完成までに会ったのはたった2回。
できた家に入って中薗氏はビックリ仰天する。70㎝の段差はそのまま残り、外壁の色が違い、二階の部屋は狭く暗くなるし、1階は以前より寒くなってしまったというのだ。

「劇的ビフォーアフター」住めなくなった我が家!週刊文春で実名告白 (1/2) : J-CASTテレビウォッチ

Web制作は、規模は小さいものの家を作る仕事によく似ています。

CMSのテーマ制作において
耐震・耐火・水回りはHTML、デザインはCSS、
照明や収納が、基本のCMSタグ。
そして、いわゆる匠の技=「なんということでしょう」がテーマ制作者個々の工夫にあたります。
カスタムフィールドや拡張、ナビゲーションの自動生成、jQueryプラグインの追加など。

私もビフォーアフターを観ていた頃は趣味でブログテンプレートを配布していたので、こういったギミックを追加して利用する人を驚かせるのが楽しみでした。
ですが、依頼を受けてテーマ制作をするようになってからは、ずいぶん変わっています。
クライアントとの、打ち合わせ・ヒアリングに長い時間を割くようになりました。

フリーランサーのクライアントは様々です。
レンタルブログしか触ったことがない人だったり、特定のCMSを長年愛用してきた人だったり、プロの制作会社だったりします。
それぞれの現状の不満と要望、予算、納期など、メールで何度もやり取りをして、時にはデモページを作ったりもします。

もちろん「なんということでしょう」はクライアントの了承のもとで行いますし、プラグインを介する場合は「有志の制作なのでバージョンアップ後に使えなくなる可能性がある」というリスクも説明します。
状況によっては、敢えてレガシーなテーマ構成にすることも少なくありません。

元々そういうのは得手ではありませんから、
「あのサイト、うまく更新できているだろうか」
「あの機能、全然使ってないな…よかれと思って追加したけど不要だったかも…」
と、もやもやすることもしょっちゅうです。

そんな経験をして、改めて件の記事を読んで考えるのです。

ヒアリングのない「なんということでしょう」は仕事ではないし、
私は「匠」じゃなくて、アドバイザーを目指さなくちゃなあ、と。


余談ですけど、後輩の部屋を勝手に改造してしまったこいつら、なかなかの匠です。
後輩も楽しそうですし、数日後にちゃんと復旧してますけどね。