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「両親の代わりに営業チームで子守をした話」が真夏の怪談に聞こえる

大事な商談の日なのに、保育園に預けられない──両親の代わりに営業チームで子守をした話 | サイボウズ式

http://cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/m001163.html

みんなが「いい話」「いい会社」と言っているこの記事に、私は違和感を覚える。

正直、サイボウズという会社に恐怖すら感じる。「子どもを人に預けるなんて」という感情論よりもっと根本の部分である。

断っておくが、私は未婚で、10歳下の妹の子守くらいしか育児経験がない。働くお父さん・お母さんの苦労を思うと、流れに水を差さないほうがいいのかもしれない。でも、この話は明らかにおかしいのだ。

えっ、他人に家を預けるの

そこで才田さんは、同じ販売パートナー企業を担当する後輩の酒本さんに自宅に来てもらい、在宅勤務で仕事をしながらお子さんの面倒を見てもらうことを提案したのでした。

ここまでぼーっと読み進めていた私は、酒本さんが独身男性ということを知って驚愕した。

いやいやいやいやいやいや。いくら子どもと面識があるからって、家族でもない人と子どもを自宅に二人きりにしたらいまずいのでは。

たぶん酒本さんはいい人なのだろう。信頼できる部下なのだろう。しかし彼が実は借金に困っていたとか、別のベクトルで幼児が大好きな人だったという可能性は、残念ながらゼロではないのである。

かつては、ご近所の子どもを預かるということはあったが、それは地域コミュニティが今よりもオープンで狭く、何かあってもすぐ解決できる体制だからこそ成り立っていたことである。

悲しいが、子どもには性善説を教えつつ、自分は性悪説を心に宿すのが、現代の親に必要な処世術ではなかろうか。

溶連菌は大人にも感染する

溶連菌は子どもから大人に感染することがある。

[溶連菌感染症の症状・原因・治療法]大人も要注意!発疹やかゆみが出る前に予防するための方法まとめ|welq [ウェルク]

https://welq.jp/3482

特に子どもを通してなどで、一度感染した人は二度目を発症しやすくなると言われている。

才田さんは、溶連菌感染症と判断されるまで、子どもとずっと一緒にいたわけなので、保菌者の可能性がある。あと1日は出かけない方が良かったのではないか。

私はよくしゃべるので、だいたい打ち合わせの際は喉を痛め、翌日は風邪をひく。もし相手の担当者からそんな話を聞かされたら、打ち合わせどころではなくなりそうだ。

そこは素直に遅刻したら

ただ、勝沢さんには今後スケジュールの確認をきちんとして欲しいですね(笑)。

勝沢さんから子どもを預かった、弘田さんの発言。たぶん本音。

共働きの夫婦は、とてもとても忙しい。いつ熱を出すかわからない子どもと向き合いながら、タイトなスケジュール調整をする毎日だ。その程度のことは、Rhythmoonプロジェクトに長年参加しているので、コラムを通して知っている。たまには大失敗もあるだろう。

しかし、しかしだ。なぜそこで「私の責任でどうしても出席が遅れてしまいます」と謝ることより、外回りのおじさん二人に子どもを預けることを優先したのかが、どうしてもわからない。

クライアントがたいへんなセレブで、次に打ち合わせができるのが三年後とか、クライアントが大映ドラマの悪役並みに嫌な人で、ちょっとでも機嫌を損ねたらサイボウズごと潰しにかかるとかでないと、そこまでして遅刻できなかった状況を想像できない。

育児 and 保育, not equal 子守

サイボウズでは「社員同士が子守ができることでサポートし合える会社を!」と盛り上がっている様子だ。それはいいことだと思う。

しかし、今回の二例は、あくまで「育児の素人が子どもを見ていた」だけである。育児と保育は、子守とは全く別のスキルが必要な行為であって、これが日常化したら子どもにはよいことはないのである。

実際にシステム化しようと考えれば、有資格者による本格的な勉強会と、育児経験の豊富な母親か、保育士の常駐が必要になるだろう。

ただ、社員が子どもの面倒を見るというのは、やっぱりリスクが気になりますね。何かあった時の責任のことなどを考えると、今後も同じようなケースがある場合は、違う選択肢を視野に入れてきちんと対応を考えていくべきかなと思っています。

本部長の栗山さんは「あくまで今回の2件は特別」と慎重なコメントをしているところへ、社長の青野さんが世の男性らしい楽観的なコメントでひっくり返してくださるのが味わい深い。

イクメンを増やすことにもなりますし、奥さんにも喜ばれる。独身でも合コンでポイントあがるかも(笑)。

繰り返すが、子守と育児と保育はそれぞれ別物で、決して一緒くたに扱ってはいけない。

それがわかっていない人が多すぎるから、育児情報サイトの「離婚寸前!まったく育児をしていない、自称イクメン夫の○個の特徴」などという記事に、たくさんいいね!が付くのである。

助け合うという理想、捨て石という現実

サイボウズ社内での、今回の事例の報告には80件のいいね!が付いたという。自分も、もし同僚であれば、「おつかれさん!」という意味でいいねするだろう。

サイボウズには現在、300人以上の社員が在籍している。敢えていいね!しなかった人、私のように考える人も少なからずいたのかもしれない。

以前、テレビでアナウンサーが「独身は捨て石」という趣旨の発言をして批判を受けている。私はこのアナウンサーが言いたかったことに同意している。最近は「自分は、真っ当に家庭を築き、子どもを育てる人々のための捨て石である」と認識している。

共働き夫婦の育児を取り巻く事情は、相変わらず厳しい。保育所の優先度が低くなる、両親のどちらかが在宅勤務の場合はなおさらである。

今回のような、ある程度の助け合いは確かに必要なのだが、あくまで理想に過ぎないのではないかとも考えている。やはり本当の育児は、いつもそばにいた家族か、長い経験を積んだプロの保育士にしかできないのである。

子どもがいる人は社会的成功を、子どもがいない人は自分の意思で得られる休暇を、

お互いに犠牲しなければ成り立たないのだろう。

少なくとも、今のままでは。

#thinking