CSS Nite in KOBE, Vol.2に参加しました。私にとってははじめての地方版です。
実行委員の岡田さんには、a-blog cmsユーザーとして以前からお世話になっていて、昨年の札幌版ではスイーツタイムのお菓子を提供していただきました。
今回はそのお返しとして、六花亭のマルキャラの提供・ご紹介もしてきました。
私自身は、今年の春でデザイン業務は終了していますが、ディレクションやカンプを参考にしてのパーツづくりなどは続けています。
神戸では、総合的な学問としてのデザインを勉強してきました。
セッション1「クロスチャネル時代のWebデザイン」(長谷川 敦士さん)
長谷川さんは東大で博士号を取り、物理学者の経歴もありながら、現在は情報デザインを専門にしているという人です。
「理解をデザインする人=インフォメーションアーキテクトである」
「ならば、ウェブサイトにおけるコミュニケーションの問題を解決する、すべてのWebデザイナー=IAである」
といった趣旨で、理論的なデザイン設計の進め方を解説されていました。
特に面白かったのが、大手ウェブサイトなどで採用されている「カスタマージャーニーマップ(エクスペリエンスジャーニーマップ)」の紹介です。
そのサイトへアクセスした人が
- どのようなデバイスで
- どのようなアクションを行い
- どのような体験をし
- どのような感動を得るのか
ということを予想し、図にしたものです。
予約など、どこかのタイミングで、顧客のテンションがかなり下がることが予想されるなら、どのように経路を改善すべきかを考える材料となるのだそうです。
長谷川さんが例示されたマップは、こちらの記事でも見ることができます。
航空会社の図が、タスク別になっていて気になるのですが、もうちょっと詳しく見たいなあ。
セッション2「Webデザインで考えておきたい色の話」(坂本 邦夫さん)
Webデザインにはさまざまな分野がありますが、坂本さんは色彩の第一人者です。
お正月のLT大会で入手した著書「ウェブ配色 決める!チカラ」がとてもためになる内容で、坂本さん本人も面白い人なので楽しみにしていました。
色彩というとパッと浮かぶのが「明度」「色相」「彩度」などの色彩学なのですが、坂本さんの場合はそれに加え、Web制作でありがちな
- おまかせな雰囲気だったのに提出したら「なんか違うんだよなー」と言われた
- 「綺麗で清潔感があり斬新なイメージが希望です」って曖昧なことを言われた
- クライアントの社長さんの好きな色を指定された
といった認識ずれを改善するために考えること・すべきことを、著書を下敷きに話されていました。
強調していたのは
- 中間に立つ営業・ディレクターの役割はひじょうに重要である
- 色の説明は例えを明確に、空の青と水の青はニュアンスが異なる
- キーカラーとなる一色は、長く使えて目的に合った色を慎重に決める
- キーカラー・アクセントカラーがしっかりしていれば、細かい色の変更はあまり問題ではない
といったことでした。
クライアント・営業との認識ずれは、特に私たちのような中小の制作者に起きることであり、あーあるよねーとうなずいてしまうことばかりでした。
セッション3「Webデザイナーのためのタイポグラフィと文字組版」(鷹野 雅弘さん)
どんな分野も詳しい鷹野さんですが、DTPデザインが本来の専門です。
私は文字組がとても苦手です。
今回のセッションにもあった、最低限抑えておきたいポイントというのは、どうにか知識として身に付けていて、地元のプログラマさんを対象にセッションをしたこともあるのですが
- カッコに半角を使用しない
- 日本語と英数字は混植する(ヒラギノとMyriadなど)
- TやWのあとの小文字は詰める
- 和文は英文より行間を大きく空ける
- 金額・日付は大きく、「円」「月」などの単位は小さく
鷹野さんの場合は、和文フォントと英文フォントの決定的な仕様の違いから解説が始まり、なぜ上記のようなセオリーに従うのがよいのかという理由付けまで、一環して解説されていました。
2010年のLP11でのセッションをベースにブラッシュアップしたものなので、参加されなかった人はこちらを見るのがお薦めです。
セッション4「Webデザインは、いったい、何を解決できるのか?!」(中川 直樹さん)
中川さんのお話は、いろいろなセッションを見てきた中でも特に面白かったです。
面白いポイントは、Webだけではわかりません。
とにかくキャラが濃いのです。
スタート直後からものすごいスピードで、ガンガン持論を展開します(で、10分ごとに我に返ります)。
圧倒的な情報量に関わらず、流れと理由付けがあり、そ・そうなのかー!と納得させられてしまいました。
中川さんは「Webデザインだからこそ解決できること」を特に強調され、それは「エモーショナルな表現」であると言われました。
その例として挙げたのが、パララックスを利用したふたつのブランドサイトです。
ひとつは文字主体で、各画面のスクロール時の効果がすべて同じですが、もうひとつは画面ごとに効果が異なり、パーツがそれぞれ、細やかな動きをします。文字の説明もほとんどありません。
- 予想通りのロジカルな動きには、人は安心感を覚える(が飽きる)
- 予想と異なる動きには、人は驚く(と同時に感動と興奮を覚える)
- ユーザーのアクション・体験も含めた立体的な表現ができるのはWebデザインの長所である
といった話をされました。
最初のセッションの長谷川さんと、イメージは全く異なるのですが
「Webデザイン=体験するデザイン」
という主張は完全に一致していて、UXの意義、重要性がよくわかりました。
今朝の「デザインあ」は、この意外性による感動がテーマでした。
中川さんの話が気になった人は、これを見ると参考になるかもしれません。
まとめ・実行委員の視点から
参加者の視点から他の地方版のCSS Niteを見て、参考になることがたくさんあり、札幌の実行委員会にいろいろ収穫を持ち帰ることができました。
関西圏のCSS Niteは、交通の便を活かして各地域の実行委員会がスタッフを貸し合うなどの協力体制を取っていて、他県の力を借りられない札幌版と比べるとうらやましい話です。
その分、当日の指揮や調整の負担が大きそうでした。
神戸版では、セッション3の前に、ビデオセッションがありました。
札幌で次回出演される春日井さんなど、CSS Nite関係の著名な人たちに
「あなたにとってデザインとは?」
をインタビューしたもので、これも興味深い試みでした。
一点だけ、11:00スタートで一時間×4のセッションはさすがに長い…!というのが、不満点として残りました。
モチベーションを保つのもしんどいですし、休憩時間には、女子トイレに行列ができていました。
札幌版でもやっていることですが、協賛の5分プレゼンや、ショートセッションをからめるといいのではと思います。
札幌にも、全国を相手に活動しているデザイナーは多くいます。
そういう人たちのために、デザインをテーマにしたCSS Nite in SAPPOROをやってみるのも良いかもしれません。
また先の目標ができました 😀
記事中の写真は、写真担当の鍋坂さんにご提供いただきました。謝謝(-人-)
Photo by 鍋坂樹伸(サン・スタジオ)